2015年5月17日日曜日

財産税は憲法違反か


  • 日本が今すぐにでも財政破たんするかのように言うのは,さすがにトンデモ論ではないかと思う。

  • しかし,自分が生きているうちに財政破たんするかと考えると,私は残念ながら,財政破たんする可能性の方が高いんじゃないかと思っている。

  • まあ,5年10年とか,あるいは20年くらいは何とかなったとして,その先はどうだろうか。

  • 国の借金の問題でも,人口減少や社会保障費の問題でも,今後も状況は悪化し続ける見込みで,今のところ改善の見通しが立っていない。

  • 状況の悪化が食い止めらなければ,いずれどこかで耐え切れなくなるんじゃなかろうか。

  • 財政破たんが発生した場合に怖いのは預金封鎖や財産税だが,だからと言って,その対策のために,海外に資産を隠すとか,海外移住するなんてことはさすがにやりすぎだろう。

  • 一方で,憲法29条が財産権を保障しているから,現行憲法下で財産税は実施されないという意見もあるようだが,それはあまいと思う。

  • というのは,憲法の人権保障は無条件ではなく,例外が認められる場合があるから。

  • 公益的な必要がある場合には例外が認められやすいので,国家の危機ともなれば財産税も許容される可能性が高いのでは。

  • それに憲法は,最高法規とは言うものの,法律のように強制力があると言えるのかどうか微妙なところがある。

  • というのは,例えば財産税が憲法29条に違反するとしても,それが導入そうになった際に,憲法違反を理由にその導入を阻止する法的な手段がない。

  • もちろん,導入後に個別の事件について裁判を起こせば裁判所が憲法判断をするだろうが,おそらく最高裁まで争われて結論が出るまで何年もかかるだろう。そのころには,もうどうでもよくなっているのでは。

  • また最高裁が違憲判決を出したとしても,それによって制度が当然になくなるわけではない。制度を廃止するかどうかは国会が決めることであって,政府与党が合憲だと言い張れば制度は存続しつづける。

  • そんなこんなで,裁判所に過度の期待をするのは間違いだと断言していい。

  • 結局のところ,憲法というのは政治的なものであって,国民が為政者に対して政治責任を追及すること以外に,その保障を担保する手段はない。

  • それは要するに「野党に頑張ってもらうしかない」ということである。そういう書き方をすれば,憲法の保障などいかに頼りないものか分かっていただけるんぢゃないだろうか。

  • しかも,昨今のギリシャの混乱ぶりを見ると,国家が本当に危機的状況に陥った場合に,有権者が合理的な判断をするかどうかもはなはだ疑問だけれど。

  • ただいずれにせよ日本の政治家は,財産税で有権者の不評を買うよりは,インフレ税の方を選択するだろう。インフレ税を憲法違反だと主張するのは,財産税以上に難しい。