2016年5月3日火曜日

リップルの送金コストはどれくらいか


  • ビットコインとは違ってリップルの仕組みは理解しずらいが,ネット上にある解説も奥歯にものが挟まったようで,理解が進まないのはそれも原因ではなかろうか。

  • リップルは,一言でいえば「暗号通貨を利用して銀行振込のような送金を実現するシステム」なんだと思う。

  • だから,「ゲートウェイ」とか「IOU」などと小難しい横文字を使わずに,単純に「銀行」とか「預金」などと言って説明したほうが分かりやすいんじゃないだろうか。

  • ちなみに,IOUは [ I owe you ] が語源だそうで「借用証書」と訳されているが,~証書などと言うから紙ベースのなにかを想像して意味不明になるのであって,ここでは単純に「債務」と訳すのが実態に即しているし,法律的にも正しいと思う。

  • 「債務」というのは借りる側から見た場合の言葉であって,同じものを貸す側から見た場合には「債権」になるから,「債権」と言い換えてもよい。むしろ,リップルを利用するユーザーは「貸す側」なので,「債権」と呼んだ方が分かりやすいだろう。

  • 銀行預金は,預金者から見れば「預金債権」,銀行から見れば「預金債務」であって,金銭を目的とする債権債務であるという意味でIOUと全く同じだから,IOUを「預金」と読み替えてもなんら差支えない。

  • リップルが目指しているのは,「預金と暗号通貨(XRP)を取引するマーケットを作ること」なんだと思う。

  • 例えば,A銀行からB銀行に送金をしようと思ったら,そのマーケットでまずA銀行の預金を売って暗号通貨を買い,さらにその暗号通貨を売ってB銀行の預金を買う。これによって,中央銀行やコルレス銀行を経由することなく銀行間の送金が実現する。

  • マーケットで取引されるのは,円預金に限る必要はなく外貨預金でもよいだろう。ならば,ビットコイン預金とかイーサリアム預金なんてものでもよいはずだ。

  • ところで,リップルは低コストの送金を実現するとされていて,特に海外送金の手段として有望だと思うのだが,その仕組みを考えるならば,マーケットの流動性の問題になったり,為替コストが発生するのではないかという疑問が当然に生ずる。

  • そこで,実際に送金をしてみて,どれくらいの送金コストがかかるのかを確かめてみることにした。

  • やってみたのは,M社という国内ゲートウェイからT社という国内ゲートウェイに3万円を送金することだが,これには次のような手順を踏んだ。


  • 1M社に3万円を入金する。
    2M社の口座で預金を暗号通貨に両替する。
    3両替した暗号通貨を,M社の口座からT社の口座に送金する。
    4T社の口座で暗号通貨を預金に両替する。
    5T社の口座から預金を払い戻す。


  • 実際に要したコストは次の通り。ただし,細かい端数は割愛している。

    1. M社に入金する時点で,入金手数料として108円(定額)が差し引かれ,2万9892円が入金された。

    2. M社で仮想通貨に両替する際に,取引手数料(0.2パーセント)として59円を差し引かれた。為替レート(XRP/JPY)は平均0.7218だったので,2万9892円を41330XRPに両替した。

    3. T社で預金に両替をする際には取引手数料は差し引かれなかった模様。為替レートは平均0.7080だったので,41330XRPを2万9262円に両替した。

    4. T社から出金をする際に,出金手数料656円(0.498パーセント+463円)が差し引かれ,2万8606円が出金された。

  • これら以外にも,両替や送金に際して0.012~0.015XRPのネットワーク手数料が発生しているが,1XRPは0.7円程度なので0円と評価して差し支えないだろう。

  • 戻ってきたお金が2万8606円だから,全体の送金コストは1394円で,うち823円がゲートウェイの手数料だから,571円が為替コストとなる。

  • 実際にやってみた感想だが,送金スピードは非常に速いのだけれど,為替レートがXRP/JPYとJPY/XRPで統一されていなかったり,指値注文しかできなかったりで使い勝手がよくない。

  • 流動性も低く,オーダーも数万円くらいがせいぜいなので,数十万円,数百万円を送金しようと思ったら,かなりの為替差損を被るだろう。

  • やはり,銀行が本格的に採用するようにならないと,リップルは送金手段としては使い物にならない。